第一部、見えないチカラ
まず、ネタバレがバリバリなので、未プレイの人は見ない方が賢明です
以下、ネタバレ防止の改行を。どれくらい取ればいいんだろう……こういうのって
そもそも、あの世界で何が起こったのか
まずは、彼ら(彼女ら)の辿っていった道筋を辿っていきます
- 本編開始前に起こった事(本編、プレリュード01、同05、DPC(雨のはじまり))
- クリスとアル、手紙をかわす約束
- 事故発生、現場にいたのはクリスとアリエッタの二名(車の運転手を別とすると)
- アリエッタの中から、フォーニ(この頃は、まだ名もない意識体、『彼女』と記述)の誕生(この事から、『彼女』はアリエッタの意識から生まれたと考えていい(*推定1))この時から既に、クリスには『彼女』の姿が見えていた(つまり、これ以前にクリスは、『彼女』を見る事が可能になった要因がある(*推定2))
- 『彼女』、アリエッタの中に戻ろうとするが、失敗(この時点で、何故『彼女』はアリエッタに戻る事が出来なかった?(*疑問1))『彼女』はアリエッタに戻る事を一旦は諦め、自分が抱く2つの思いの為に行動する事を決意つまり「トルタに、クリスを任せる(行動原理1)」「自分が、クリスと一緒にいる(行動原理2)」という2つ
- 『彼女』、クリスのマンションに先回り。数日後、『彼女』とクリスが出会うこの時、クリスは『彼女』に『フォーニ』という名前をつける(何故『彼女』の姿の元ネタである『ファータ』に似ている、『フォーニ』という名前をつけた?(*疑問2))
ここから、2年と8ヶ月もの月日が流れる(概ねこのくらい)。この間に、フォーニの存在に関わる事といえば
- クリスを除けば誰も、フォーニの姿を見ることはなかった(双子のトルタであってもそれは同様。つまり他の人間には無くて、クリスにある『何か』が、フォーニを見る事を可能としたならば、その『何か』は何だ?(*疑問3))
- ニンナさんが、フォーニの歌声らしきものを聞いた(声ではなく、歌ならば他の人間もフォーニを知覚出来る?(*余談1))
ぐらいである
- 本編において起こった事
- ファル・リセルートにおいて、フォーニはどちらかに後を任せて消えていく(行動原理1の変形、「誰かに、クリスを任せる」。幸か不幸か、「アリエッタとしての別れ」はトルタが手紙という形で既に決着させている。この時のみ、トルタとフォーニの行動原理が一致したと言える(*余談2))特にファルルートでは、以下の重要だろうポイントがある
- クリスは1/8にアンサンブルした時のフォーニの声に、揺さぶられるようなものを感じている『……これは、声か。 僕を呼ぶ声。 懐かしい声だ。』(何故そんな感情を抱いた?)同時に、フォーニの歌には「悲しさ」があったというなお、この日にアル(トルタ)からの別れの手紙が届いている。逆算すれば発送したのは1/5。意外と早い
- フォーニが残した『さようなら』の手紙を、クリスはアルからの(本当はトルタからの)手紙を入れている引出しに仕舞う(心の何処かで、フォーニがアルだったと気づいていた。という事か?気づいていたのなら、それは何故?(*疑問4)
- トルタルートでも基本は同じだが、さらに以下の点がある
- フォーニが消えた時期と、アルの残った肉体が死亡した時間がほぼ一致する(フォーニとアルは、離れても何処かで繋がっている(*推定3))
- ニンナさんが、まるでフォーニが見えるかのように振舞う(これについては、その後まったく話が出ていないので保留とする、何か別の説の証明に使えるか?)
- そして問題のフォーニルート、様々な出来事が発生
- フォーニは行動原理1に沿って、誰か任せられそうな相手を探すよう促すが、クリスはそれをスルー出来る限り、フォーニと一緒にいようとした(又は『fay』の作曲活動だが、これも「フォーニと一緒にいようとする」行動の一つだろう)
- この心変わりは、夢の「思い出さなくていいから」という言葉に反して、「思い出そうとした」結果であるとも言える(この声は、誰のもの? また、何故「思い出さなくていいから」?(*疑問5))
- 最終的にフォーニは折れ、行動原理1を諦めて行動原理2を自分の行動原理とする(卒業演奏の決断は、その現れと考えられる)
- また、本筋に直接関係のない事も
- トルタ(12/20には既に発覚)、マルコのおじさんと立て続けにフォーニの歌を聞いた(*余談1の補強、クリス以外の人間には言葉が聞こえず、姿も見えないフォーニでも、歌ならば他の人間にその存在を知覚させる事が可能)
- そして、卒業演奏後
- コーデルが、フォーニの歌を「天使の歌声」と表す(*余談3)
- トンネルに入る前、クリスは「会って、それから全てを決める」と言ったこれには、「会ったら何かが変わる」というようなニュアンスが含まれているように思える
- 「もう、雨は降っていないんだよ。」の台詞の直後に入るモノローグの『……もう、雨は降っていないんだよ。』は、誰の言葉?(*疑問6)
- 『フォーニはアルで、アルこそがフォーニだった』(*推測)
- 『――奇跡など、期待はしていなかった』の直後に異変が起こるそして、この独白には嘘が含まれているように思える。本当に期待していないとしたら、何故彼女に会いに来た?ほんの僅かな可能性でも、「アルが目覚めてくれたら」と思わない筈がない
- 「私はいつも、あなたを別の方向へ導こうとして……」この台詞は、フォーニの事か? あるいは、それ以外に要素はあるのか?(*疑問7)
- そもそも、何故この時にアルは目覚めた?(*疑問8)
- 最後の一枚絵で、アリエッタの来ている服がフォーニと微妙に似ているように思える多分、フォーニの一番上の服(外套っぽいやつ)を外したら袖と色の違いを除けばあんな感じ(*推定4)
ここから、考えられる事
改めて疑問1-8、推定1-4を順番に並べてみる
- 疑問1:事故にあった時点で、何故『彼女』はアリエッタに戻る事が出来なかった?
- 疑問2:何故クリスは、『彼女』の姿の元ネタである『ファータ』に似ている、『フォーニ』という名前をつけた?
- 疑問3:クリスにあって、他の人には無い、フォーニを見る為に必要な『何か』は何だ?
- 疑問4:(ファルルート1/19)フォーニからの手紙を、クリスはアルからの手紙が入った引き出しに仕舞った心の何処かで、フォーニがアルだったと気づいていた。という事か? 気づいてなかったとしたら、何故こんな事を?
- 疑問5:真トルタを見た後da capoをはじめた時に聞こえた声は誰のもの? また、言葉の意味は?
- 疑問6:列車の中のモノローグの『……もう、雨は降っていないんだよ。』は、誰の言葉?
- 疑問7:「私はいつも、あなたを別の方向へ導こうとして……」というアリエッタの台詞これはフォーニの事か? あるいは、それ以外に要素はあるのか?
- 疑問8:そもそも、何故フォーニEDで、アルは目覚めた?
- 推定1:『彼女』はアリエッタの意識から生まれたと考えていい
- 推定2:病院のベッドで『彼女』を見る以前にクリスは、『彼女』を見る事が可能になった要因がある
- 推定3:フォーニとアルは、離れても何処かで繋がっている
- 推定4:フォーニEDの最後にアルが着ている服が、フォーニのものと少し似ているように思える
推定1,3から、『彼女』=フォーニは、アリエッタのココロが形をとったものと考えられる
また、推測は『フォーニはアル(の一部)で、アルこそがフォーニ(の全て)だった』
と読む事も出来る。フォーニの全ては、アルが持つ「ほんとう」も「偽り」もひっくるめた
アルの思いであったと考えられる
また、推定4も少々強引ながら、証拠として加えてもいいかもしれない
疑問1の対面と疑問8の対面で、違うのは「本当の事を知ったクリスがいる」という事
また、「アルが既に弱っていた」というのもある
疑問2-7はそれぞれ
- 疑問2:クリスもあの本を読んでいた為(クリスはうろ覚えだったが)。または本当に偶然
- 疑問3:アリエッタとの、手紙をかわすという約束(ここで「トルタとアルを別の存在と見た」は成立しない。それが『何か』なら、トルタもトルタの両親も見ることが出来た筈また、この説でも「トルタ達は後からこの約束を知っていた」という問題がある)
- 疑問4:気づいていなかった、「フォーニが、アルと同じように大事な存在だった」という可能性
- 疑問5:フォーニが枕元で吹き込んだ。または「思い出すな」という自分自身の声
- 疑問6:もう一回クリスが心の中で呟いた
- 疑問7:文字通りフォーニのみ
これらの疑問は一つの仮説を立てると、その一本だけで筋の通った見解になる
- 仮説:クリスの中に、アリエッタのココロの、フォーニにならなかった残りの部分が入り込んだとしたら?
これを軸に、疑問に答えてみると
- 疑問1:『彼女』だけでは、アリエッタの全てにはなりえない。よって元には戻れない
- 疑問2:アリエッタはあの本に強い影響を受けていた。それがクリスの記憶と結びつき名前選択に影響を与えた可能性が高い
- 疑問3:推定4により、フォーニはアリエッタのココロの一部であるというアリエッタのココロの一部を持つクリスならば、自らの一部と同じモノで出来ているフォーニが見えてもおかしくない
- 疑問4:クリスは、無意識で「自分のココロの中のアリエッタと、同じ存在であるフォーニ」の事を感じていたまた、フォーニの「別れ」の感情がこもった歌に、その持っていたココロが敏感に反応しその結果、フォーニ≒アルとの別れを感じ、あのような行動に出た
- 疑問5:クリスの中にいるアリエッタのココロの声、フォーニと同じような願いを持っていたと考えられる
- 疑問6:疑問5と同じく、ココロの中のアリエッタの声。彼女はもちろん雨の事を知っていた筈
- 疑問7:クリスの中のアルも、フォーニと同じように「別の方向へ導こうと」していた事故の記憶を隠したり、トルタに依存させるように他の学生と立場を離したり(al fineでは、クリスの行動に関する選択肢は一つしかないあるいは、クリスの中のアルが「そういう方向に」動かした結果かもしれない)
- 疑問8:『アリエッタのココロが作った』フォーニと『アリエッタのココロの一部を持ち、アルが目覚める事を望んだ』クリスと『ずっとココロが無くて、眠ったままの』アルの身体が揃ってようやくアルにココロが戻り、目を覚ました
この仮説には、「ならば何時、何故クリスの中にアリエッタのココロの一部が入り込んだのか」という疑問があるが
これには極めて簡単な答えが用意されている
推定2により、クリスのココロの中にアルのココロが入り込んだのは、入院より前であると考えられる
その前にあった出来事と言えば……アリエッタからフォーニが分かれた原因である、交通事故である
あの時、彼女の(ココロも身体も)すぐ傍にいたクリスならば、アリエッタのココロを受け取ってもおかしくはない
結論
以上の点から、以下のような説を上げる事にする
- アルは事故の時、ココロが二つに分かれた
- 分かれたココロの一方はフォーニと呼ばれる存在になり、もう一方はクリスの中に入り込んだ
- アルのココロは、クリスの中と外から、彼女の願いの一つ(クリスをトルタに任せて、二人で幸せになってくれる事)を叶えようとした
- ファル、リセルートでは、アルとトルタが両方とも「パートナーとなった彼女に、クリスを任せる」という結果になった(余談2)。
- 真トルタエンドではアルの思い通りに、クリスはトルタに任せる事となったトルタは、アルと一緒にこれからの世界を生きることでしょう……彼女の、思い描いた未来の通りに
- フォーニエンドでは、アルのココロに反して、クリスが抱き続けたアリエッタへの思いにアリエッタのココロが折れ彼女のココロは再びアルの許へと戻り、一度は諦めていたクリスとの幸せを手に入れたのでした
結論としては、既存の説と同じでしょうが
この説を考えると、SRは「トルタとアル、二人の物語である」であるような気がします
真トルタエンドでも、フォーニエンドでも、彼女はその思いを遂げる事が出来たのだと思います
余談1&3
歌でしか表現をする事の出来ない、天使の歌声を持つ少女がかつて存在していた
SRと同じ世界の話である「エンジェリックセレナーデ」のヒロイン、ラスティ=ファースンである
ラスティは、天使の力によって(半ば事故で)その力を得た代わりに言葉を失った少女
フォーニは、事故のせいで生まれた、ほとんど誰にも知られることの無い代わりに歌の力を持った少女
なんだか、似ているような気がします
補強資料−「空の向こうに」でさえも?−
これを書いてから、電車の中でSRのヴォーカルアルバムなどを聞いていたところ
「もしかしたら、この歌は明確にこの仮説を裏付けるのではないだろうか」
という思いが浮かびました。「RAINBOW」トラック1番「空の向こうに(phorni ver)」です
また、これは工画堂スタジオのOHPから、キーワードとユーザーIDとでダウンロード出来ます
確かに、これは一見「SRの本筋とは関係ない」と言えますが、このファイルは
「意図的に、SRの一部となるようにはじめから用意されていた」ものでもあります
DPCが本筋の補強と言えるのならば、これがそうならないという理屈はありません
また、これが成り立たないとしても、「空の向こうに」岡崎律子verは始めから存在します
まず、何故これの歌い手は(フォーニの声である)笠原弘子さんであって、(トルタ・アルの声である)中原麻衣さんでないのか
この曲が、「クリスの中のアルが、歌った歌」であるのならば、「なりたい自分に、なった」フォーニの声と
同じであるとしても不思議ではありません。また、岡崎律子さんVerでは「アリエッタでも、フォーニでもない」存在である
「クリスの中のアル」が歌った歌だ、という理屈が成り立ちます。この場合、どちらでも筋は通ります
次に、歌詞の中で重要だと思える場所から推測してみたいと思います(抜粋は、無論参考レベルですよ)
手元に歌詞カードが無いので、変換が間違ってるかもしれません
「帰る場所は何処にある? ココロは迷子のまま」……帰る場所を失った、彼女のことを言っている?
「どれが本当、どれが嘘?〜ココロは振り子のよう」……二つの願いの間で、揺れ動く彼女の気持ち?
「ココロに秘密の場所」……彼女のいる、誰にも知られていないクリスのココロの片隅?
「誰も知らぬ朝、降り注ぐヒカリは来るだろうか」…何か、重大な意味が隠されている気がするが現状では不明
ここまでだったら、確信は持てませんでした。しかし、最後のサビの歌詞(CDでも、ゲーム版でも)が、強烈でした
「きっとこの胸に降り注ぐヒカリはあると思う、in the rain」
「その」ではなく「この」なのです。よって(歌っている声が同じだとしても)フォーニではあり得ません
この曲では、繰り返し「in the rain(雨の中で)」という単語で、「ここには今、雨が降っている」と表しています
誰が降らせたにしても、雨が降っているのは「クリスのココロの中」です。
そして、この曲を歌っている者の主観は、「この胸」……つまり、「クリスのココロの中」です
クリスは、歌を歌いません。フォルテールと歌は、いくら近くても同じではありません
この曲を歌っているのは「クリスのココロの中にいる誰か」でしかあり得ないのです
そして、「クリスのココロの中に、アルがいるとしたら」。そして「彼の中で、常に二つの思いを抱えているのなら」
すべてが成立するのです
さらに補強−天蓋に落ちてくる雨−
はじめてのCさんが、前提の一つとして数えていた「トルタルート12/25の、天蓋があるのにも関わらず落ちてきた雨」
これには、類似しながらも、決定的に違う解釈があります
また、この解釈は「クリスの中にアルが存在する」という説を補強するものでもあります
この雨は、クリスが自分に「自分は、トルティニタの事を、愛しては、いない」と思った時にのみ、一滴だけ落ちてきます
そして、この言葉は「アリエッタ=フィーネが望む未来」には決定的に反しています
元々、「クリスの中のアル」は、根本的な悲しみを持って行動しています
その上で、この時点で「彼女の思いとも、クリス自身の思いとも、反している考え」を信じようとしている彼に
二重の悲しみを抱いたと考えられます。
また、それほどまでに「自分の事を、まだ思ってくれている」という喜びも、少なからずあったでしょう
「クリスの中のアル」は、自分が愛しているクリスが幸せになる為に、存在しています(少なくとも、自分ではそう思っている)
あの一滴は、本来の法則(天蓋に、雨は入って来れない)を乱してでも「我慢出来なかった」、悲しみと喜びの入り交じった
複雑な涙であったと考えます
以下、3/25【この話の中核は、何だったのか】に続く