第二部、この話の中核は何だったのか

やはりネタバレバリバリなので、改行+続きを読む処理を
































■先に、単語集■




  • アリエッタ=フィーネ
    ある意味最悪のタイミングで事故に遭いながら、自分が望む未来を手にしようとした少女。この物語の主役
    事故のショックでその心が二つに分かれ、一つが妖精の姿になって現世に、もう一つは少年の心の中に
    両方とも、クリスが「アリエッタ=フィーネが望む未来」へ向かうように動く

    一度は死を完全に受け入れた、とあるが、それと『クリスと一緒にいたい』という願いは、相反しているのではないか?
    無意識下では、彼女は『死んでいる』とは言えないのだろう。それがどれだけ薄い氷の板でも

    『間に合わなかった』結末では、事実を確認する事なく逝く事になる
    『間に合った』結末では、自らの望みを叶えて逝ったか、自らの望みを翻して生きる事になる

    彼女は歌を歌わない。しかし、その心の一部は歌を歌う
    『間に合った』結末のひとつでは、歌を歌おうとする。『これからも幸せである』為に



  • トルティニタ=フィーネ
    ただ、好きな人の為に頑張っていた少女。または彼の守護者。al fineでの視点所有者
    また、『間に合った』結末のうちの一つ『真・トルタエンド』での主役

    ただ、本当は「早く、他の誰かに任せたい」とも思っていたようだが。
    トルタルート以外ではその決断が早すぎる

    彼女の歌は、『彼のそばにいる』為に歌われる




  • フォーニ
    アリエッタ=フィーネから分かれた意識の一つ、アリエッタ=フィーネが「望んだ自分」

    彼女はアリエッタの本体(身体)と繋がっている。彼女が消えてしまったら、アリエッタの身体は死亡する
    彼女に何故「制限時間」があったのか……恐らく、体から離れていた「そのままの状態」である事が大きいのだろう
    実際、彼女は「プレリュード05」と比べて、本編では口調が弱くなったように見える
    口調が弱くなるという事は、つまり身体の状態が衰えている、という事に直結する

    また、彼女だけではアリエッタ=フィーネにはなり得ない。よって、彼女だけではアリエッタの身体には戻れない

    「自分と同じモノを持つ」クリスにのみ、その存在を認知される。また、彼を介する事で
    彼女の歌は他の人にも聞く事が出来る。もしかしたら歌ではない『声』も聞けるかもしれない
    (「聞かれたらヤバイ」ような場面ではシャットアウト可能の様子
    実際、歌っているのに聞こえないという場面はいくつも見受けられる
    また、この『介する』というのはアンサンブルだけとは限らない。本編でも
    フォーニルートのナターレで、クリスと共に歌を歌っていただけなのに彼女の歌は聞こえていた)

    最後は、後を誰かに任せて消えるか、アリエッタ=フィーネの身体に戻るかのどちらか

    彼女の歌は、『彼女の存在意義』の為に歌われる。



  • クリス=ヴェルティン
    二人の少女、三つの意思に導かれている少年。da capoでの視点所有者。
    だけど『間に合わなかった』結末ではいいとこ無し。
    『間に合った』結末の一つ『アリエッタエンド』での主役

    意識下でトルタ、フォーニの二名に、無意識下で「クリスの中のアル」に、常に影響を受けている
    彼は歌を歌わない、かわりにフォルテールを奏でる。腕はあるのに目的が無いから困ったもの



  • 「クリスの中のアル」
    アリエッタ=フィーネから分かれた意識の一つ、クリスを『中』から誘導する

    フォーニとほとんど同じもの、ただ中にいるか外にいるかの違いだけ
    姿をとるのなら、彼女が憧れていた「ファータ」とそっくり―つまり、フォーニと同じ―ではないだろうか

    彼女だけでも、またアリエッタ=フィーネでは有り得ない。彼女だけでも恐らくはアリエッタの身体には戻れないだろう

    クリスの「人付き合いの悪さ」は、彼女に影響されている可能性が高い
    また、かつては見分けられていた筈の「トルタとアル」を、3年間見間違えさせていたのは
    彼女であったと考えられる。彼女は、クリスを悲しませるような事はしないだろうし、トルタと目的も一致している
    また、今までアルだったら「アルだ」と分かっていたのを、急に分からなくなった説明が他にはつかない
    「クリスに選ばれる方がアル」ならば、「クリスには、アルを見分ける力がある」と言っていい筈なのに、だ

    「見えないチカラを、信じていいの」と歌われる『真・トルタエンド』の後のda capoでのみ
    彼女の放つ声を聞くことが出来る。

    存在自体は語られていないが、彼女の存在を示す欠片はあちこちにバラまかれている

    彼女が歌を歌うかは分からない。歌うとしたら『自分の存在を示す』為。それは「空の向こうに」

    彼女が存在するという主張の詳細は「第一部、見えないチカラ」を参考



  • ファルシータ=フォーセット
    脇役と言うべきかもしれないが、「願いの強さ」では、何者をも勝る少女
    歌の持つ力を、もっとも強く現した存在
    彼女の歌は『何をおいても、自分が幸せになる』為だけに、歌われる



  • リセルシア=チェザリーニ
    歌の持つ力を知らないまま、歌を歌っている少女
    彼女の歌は『逃げる』為、後に『未来へと足を進める』為に歌われる。しかし、気づくのが『間に合わなかった』




  • 願いを込めるもの、何かを訴えようとするもの。及びそれを叶える力を与えるもの
    少なくとも、この世界では皆、何かの願いがあって歌を歌っている
    また、特例としてクリスがフォーニルート、ナターレでマルコさんのプッシュに負けて歌っている




  • フォルテール
    歌に非常に近いもの、願いを叶える為の力の一つ
    あまりにも音色が感情に左右されやすい楽器
    クリスが、悲しみに覆われているままか、もしくは「ほんとうのクリス」かどうかを音色から判別する事が出来る




  • 魔力
    フォルテールを奏でる為に必要なもの、「見えないチカラ」
    少なくとも、この世界で「使おうと思って使っている」人間はいない様子





  • クリスの中でのみ降っている(時々現実世界でも降る)。クリスの中の「悲しみ」に反応して強弱が変化する
    降らせている源はクリスの「本当はアリエッタを失った」という悲しみに加えて
    「クリスの中のアル」が持つ「アリエッタ=フィーネが望む未来」に対する悲しみ
    (これが成就された時、自分は消えてしまう)という悲しみが含まれている。メインは前者
    一度降ったら、なかなか止まない。




  • 「アリエッタ=フィーネが望む未来」
    そのものズバリ、アリエッタ=フィーネの心が『既に自分は、自分としてクリスには会えない』と達観し
    同時に、彼の未来を案じて、そして望んだモノ。フォーニと「クリスの中のアル」の行動原理

    DPC「雨のはじまり」及び、本編中の言動から『クリスの事を、トルタに任せる』と考えられる
    また、これの変形で『トルタ以外でも、誰か任せる人がいればその人に任せる』と思っているようだ

    だが、同時に「でも、それは……嫌だ!」という、あまりにも強い思いを持っていた
    この思いが、「本来有り得ない幸せ」を手に入れた元であると言える。彼女だけでは為し得なかった、が





■各ルートに、どのような意味があったのか■



  • 基準
    各ルートは、大まかに『間に合った』か『間に合わなかった』かに分かれる
    最初に進むことのできる三つは、明らかに『間に合わなかった』結末になる
    その後、二つの『間に合った』結末を見る事が出来る



  • トルタ通常ルート(al fine 通常ルート)
    「アリエッタ=フィーネが望む未来」を、叶え損ねたお話
    フォーニも、「クリスの中のアル」も、上手く行っていたと思っていたのに
    その彼女たちが消えてしまった直後、トルタが道を誤ってしまう
    クリスの、自分の気持ちに気づくのが『間に合わなかった』。結果、どっちつかずの結末になってしまう




  • ファルルート
    一人の少女が、幸せになる為のお話
    ファルは、自らの夢を叶えるためにクリスを利用しようとする。表面上はあくまで羊として、狼の心を内に秘めて
    それに気づけなかったアリエッタの意思2つと、気づくのが決定的に『間に合わなかった』トルタ
    利用されるだけのクリス、本人は幸せかもしれないが……端から見たら、ちょっと




  • リセルート
    少女が、自らの価値を認めようとした所で……世の中そう上手くはいかないね、というお話
    自分を認めてくれる人に出会って、変わろうとした少女と、その前に立ち塞がった父
    自分の問題を解決出来ていないクリスでは、荷が勝ちすぎていたのだろうか
    しかし基本的には、リセ自身が、歌の持つ力を知るのが『間に合わなかった』からかもしれない
    二人は二人なりの幸せを手に入れたようには思えるが……

    このルートの『その後』では、二人は二人だけでずっと暮らしていた
    最後の最後まで、クリスはピオーヴァに居たままだった……それでは、無理だ



ここで、視点がクリスからトルタへと渡される。謎を明かす為に




  • 真・トルタルート(al fine グッドルート)
    「アリエッタ=フィーネが望む未来」を、なんとか叶えたお話
    これまでのカラクリの一辺、トルタが何を思っていたか、何をしていたのかをかいま見る事の出来る
    トルタは、危ういところで道を誤らずに済む。クリスの、そして自分の気持ちに気づくのに『間に合った』のだ
    これの種明かしがメイン。二人は別れを告げ、新しい道を歩き出す

    ここで入る「ゲームクリアおめでとう」は、トルティニタ=フィーネの役割の、ひとまずの終わりも同時に意味する
    彼女は、ここでこれまでの「主役」という役割を終えるのだ
    まだ、明かされていない「秘密」がある。そして、果たされていない「思い」がある
    それは、彼女が明かせるものではない。「視点」と「主役」は、クリスの元へと送られる
    ……そう、これまでのクリスは「主役」ではないのだ。そしてクリスが「主役」となる話が、残っている





  • アリエッタルート(最後に見る結末、『ほんとうの結末』)
    「アリエッタ=フィーネが望む未来」を翻し、「本来有り得ない幸せ」を手にしたお話
    生きることを諦めた彼女を現世に引き戻したのは、諦める事なくドアを叩き続けたクリスのおかげ
    『諦めた』と言っても、それすらも心の一部で思っていた事でしか無かったようだが
    (そうでなければ、『思い出さなくて、いいから』という回りくどい言い方はしない)

    クリスが、自分の傍にいるアルの存在に気づくのが『間に合った』。よって、他の話と決定的に違う
    その証拠に、このルートでのみ、クリスのフォルテールの音色は本来のものへと戻る
    (他のルートからは、にじみ出る悲しみがその音を支えていた。これの発端は事故から来ている事に間違いない
    これから来る物が無くても、本来のクリスの音色ならばピオーヴァでも十分やっていけるだろう。元々合格したのはその状態でだし)
    さらには性格も微妙に上向きになる。カルツォーネは美味しそうに食べる
    『クリスの心を覆う、クリスの中のアルの悲しみ』が弱まったこの時の姿の方が、「ほんとうのクリス」なのだろう
    この幕は、年が変わると同時に払われる。残り雨がほんの少しは残っているが、その力はもう少ない
    クリスの、「ほんとうの音色」を隠す事は不可能だった

    『その後』、彼と彼女は音楽教室を開いたそうだ
    彼は、既にピオーヴァに居た頃の、人付き合いの極端に苦手な彼ではなかった

    そして、「ほんとうのクリス」がたどり着いたこの結末を、『ほんとうの結末』と言う事にする
    彼は約束を果たして、元に戻った彼女と幸せを手に入れました。めでたしめでたし

    それで幕を下ろす、物語


    または、『お前がどうしたいか。結局はそこに行きつく(byアーシノ)』、それに行きついた結果






■「クリスの中のアル」は、何を言っていたか■



この仮説の、もっとも重要な部分
何故「元々アリエッタ=フィーネだった彼女達」は、気持ちを翻したか

  • 11/28




『さようなら』『私はもう、あなたの側にはいられない』『だから――』『さようなら』
『思い出さなくて良いから』『私のことは忘れて』『私のことは、本当に思い出さなくて良いから』



この時の声は、無意識になのか「もう、自分は長くない」と感じているようだった
そして、その中に一辺の本当の願いが加えられて、声になる
……何故、ここで彼女の声が聞こえたかは、定かではない
だが、この声をキッカケとして、クリスは『彼女』のいる部屋のドアを叩き始める





  • 12/19




『忘れて』『でも、忘れないで』『思い出さないで』『でも、思い出して』


この時点で、「クリスの中のアル」は、明らかに「どちらがいいのか」が分からなくなってきている
少しずつ、彼女の張っていた雨が弱まっていく。その上で、クリスはドアを叩き続ける





  • 12/25

『今日で最後だから』『そしたらもう、あきらめるから』『それで、あきらめられるから』
『思い出して』『思い出さないで』『忘れて』『忘れないで』



彼女は、「もう自分は、初めから諦めているんだ」「クリスといるのは、今日で終わりだ」
「これ以上一緒にいたら、クリスは幸せにはなれない」とでも言うように声をあげる
しかし、クリスはまたドアを叩く。このドアが開かれる時は、近い

フォーニは、ナターレの教会で何を祈ったのだろうか

この日、クリスはようやく「フォーニが、アルに似ている」と気づく






  • 1/1(12/31?)

『クリス』
『クリス』
『目を覚まさない』『大丈夫だろうか』『熱がある』『私が悪かったの』『お腹は空いてないんだろうか?』『お願い、目を覚まして』『いつから眠っているの?』
『ごめんなさい』『そんなつもりじゃなかったのに』『トルタに任せなくちゃ』『私じゃ駄目なんだ』
『クリス』『どうして私じゃ駄目なんだろう』『目を覚まして』『クリス』『もうあんなこと言わないから』『どうしてあんなことを言ったの?』

『見守っているから』『熱が下がらない』『愛してる』『クリスのフォルテールが聞きたい』『優しい声が聞きたい』『笑顔が見たい』『目を覚まして』
『歌を歌ってあげなくちゃ』『そして言うんだ』『私のおかげだねって』
『トルタ』『ごめんなさい』『クリス』『好き』『好きなの』『私のことを、忘れないで』
『思い出さなくていいから』『お願い、思い出して』『私はここにいるから』『愛してる』『クリス』
『――思い出して』『思い出して』





この声は、「クリスの中のアル」と、フォーニとが一緒に呼びかけているように思える

『あんなこと』を言った、『歌を歌う』フォーニと、『どうしてあんなことを言ったの?』と言いながら、責めている様子のない「クリスの中のアル」
もしこの声が片方だけだったら、声が多すぎる。内と外、両方から聞こえる声で、倒れたクリスはようやく目が覚める

上で入れた改行の間に、彼女達の思いは、逆転する。彼女は、心のドアをようやく開ける
最後の最後でまだ『思い出さなくていいから』と言っているのは、どちらか片方が、まだ迷っていたせいかもしれない
扉の前に居る「彼」の胸に、飛び込んで良いのか悩むかのように

今まで(自分とグルになって)協力してくれたトルタに「クリスをあげる事が出来なくて」『ごめんなさい』
それは、まるで自分が今まで彼女を騙していたかのように、思えてしまうのだろう

そして、ドアを叩き続けてくれたクリスに対してのほんとうの気持ち
『愛してる』『クリス』

そして、二つの『思い出して』



ここで回想
手紙の約束と「必ず帰ってくる」約束



そして、改めて目が覚める。フォーニとの会話

「ううん、側にいてあげる。それも、私がそうしたいから」

彼女たちは、「アリエッタ=フィーネが望む未来」をかなぐり捨て、ずっと握り潰していた
『クリスと、ずっと一緒にいる』という「アリエッタ=フィーネが本当に望んだ今」へと向かう
(ここで『一緒にいる』と『ずっと一緒にいる』の間に大きな差があるのは分かってもらえると思います)



「涙がほおを流れても」にも、フォーニ(笠原弘子さん)Verがあります。全てのエンディングを見た後にのみ、フリーモードでプレイ可能です



時は飛んで、街へと帰る列車の中
クリスの「もう、雨は降っていないんだよ。」と、その心の中からの『……もう、雨は降っていないんだよ。』
二人の雨は、この時既に止んでいた。窓から見えるのは、彼女を連想する青い空

「でも、止まぬ雨はない」


そして、彼らは戻ってくる。アリエッタの身体の元へ
彼らが揃った後、変化はあまりにも早くに訪れる
アリエッタ=フィーネを構成する全ての要素、つまり

  • アリエッタ=フィーネの身体
  • アリエッタ=フィーネの心の一部だった、フォーニ
  • アリエッタ=フィーネの心の、フォーニでなかったもう一方の部分である「クリスの中のアル」

これら、ジグソーパズルの全てのピースとも言うべきモノが揃って、アリエッタはようやく元のアリエッタ=フィーネへと戻った

「ココロの瞳で、それを見つけるんだ」
「見えない力を信じて、いいの」



彼女は、ずっと見ていたのだ。そして、聞いていた

「いつもそこにいた、気づかないだけ」


そして、彼を導こうとした……違う方向では、あったものの






歌が上手な妖精だった要素はあるものの
彼女は、歌が下手なアリエッタ=フィーネへと戻ってしまった
だけど、歌おうとする……幸せで、あるように

「だから、いいの……いいの」




■要するに、この話の中核は何だったのか■




この話は、二人の少女と、三つの思いと、一人の少年とその思いが主役になる物語

自分たちが望む未来へと少年を導こうとする思いに、流されるか
それとも、自分の抱いていた思いを貫き通し、「ほんとうの自分」を手に入れるか

「ほんとうの自分」を手にいられなかった(手に入れなかった)時は、誰かに流される結末しか無い
もしくは、下手に抗って、結局『間に合わなかった』結末しか、得られないか

「ほんとうの自分」を手に入れた時、初めて自分にとっての「ほんとうの結末」を手にする事が出来る

寓話的ではありますが、そういう話であったと思います





この説を得るのには、はじめてのCさんの仮説が不可欠でした
あの仮説に触れる事で、自分は再びSRをプレイし、その中身に触れる事が出来たのですから
改めて本当に、感謝します




彼と彼女の未来に、幸あれ